| 結婚して２年が経った。
俺はまったく生活を改めない。改めるどころかますますウェイブにハマる一方だ。
休みの日は暗いうちにゴソゴソ起きだして海に出かける。帰りはもちろん渋滞時間を避けるためと称して10時過ぎ。飯食ったら即ネル。
堅気の職場の妻とはまったくのすれ違い。
仕事は仕事で相変らず木が揺れたっていやぁスクールに電話。台風が発生した日にゃぁ、まだフィリピンあたりだっちゅうに気もそぞろ。
有給休暇は完全消化でいつでも顔は日焼けで真っ黒。休みの翌日には潮焼けで目が真っ赤だったりする。
うーむ、公私共にかなーりマズイ雰囲気かも。
まだ、まっとうなサラリーマン人生を送らねばならないと思っていた俺は一計を案じた。
そーだ、逗子に住んじゃえばいいじゃん。
海の側なら休みの日はずっと海にいられるし、家にもいられる。 朝、天気図と海見てサボるかどうか決めればいいじゃん、と。
実際、吹くと踏んで算段して海に行ったものの、ガスティだったり波が小さかったりとガッカリすることは多くなっていた。
乗れりゃいいってモンじゃない、とエラソーにコンディションを選り好みしがちな段階の俺であった。
そして俺が狙った物件はただひとつ。
海岸から一歩入ったマンション。
そこにはフルヤが住んでおり、フルヤの部屋（4階）からは前のマンションに隠れて水平線しか見えないこと。そして5階以上ならバッチリ海が見えることを確認済みだ。
ただし築年数はけっこうなもんだし、夏場の湿気、冬場の風と砂、クルマの錆などは覚悟しなければならない。
そして何よりも遠距離通勤。
逗子から俺の職場まで電車に乗っている時間だけで1時間半（片道ですよ）だ。しかしこれも逗子が始発の車両が増結されることは先刻承知。ただし、その車両に座るためには2本ほどやり過ごさねばならない。
このため、行きの通勤時間はドア・トゥ・ドアで2時間となってしまう。
だけど、それがなんだっつーの。
毎日海が見られて、休みの日には夕日（西向きです）も見られてサイコーじゃん。
ワシと同様通勤時間が長くなる妻を説き伏せるのはさほど難しいことではなかった。向こうもこの状態が続けばロクなことにはならないのがわかってたんだと思う。
それから、ワシの逗子通いのメニューに不動産屋通いが加わった｡
バブルの直前、なおかつ既に築後ある程度たっているため、相場もなんとか自分がローンを組む範囲内で買えそうなこともわかった。
そして程なくまさに目指す物件、あのマンションの海側の5階が売りに出され、数ヵ月後ワシは逗子の住人となった。 |
