「あ、龍ちゃん」
とＭ先輩を呼んだのは、くだんの女子高校生であろうか。
確かにかわいい。
「あ、これ僕の会社の後輩」
「オッス、ヨロシクー」
確かにかわいいんだが、なんだか様子が違う。
写真から可憐な女子高校生を想像していたのが、なんかおっさんみたいな言葉遣いはするは、地べたに座ってパン食ってるわ。
おまけにショップの連中とも既に懇意らしく、タメ口ききあっているのであった。
「なんか違うんじゃないっすか」
「ははは、実はあそこにいる学生のこと好きで、追っかけまわしてるらしいんだよねー。それ言っちゃうとこないかと思って言わなかったんだけど。黙ってりゃあいつもかわいいんだけどねぇ。」
****************************************************
さぁ、ウィンドに集中する環境は整った。
今回は３日間の入門コースなのだ。３日間で乗れるようになるのだ。
まずは、ショップから海岸までゾロゾロと引率される。生徒は多分３０名近くいるのではないか。
確かに、流行ってるんである。
スクールは、海岸端にある「京急逗子会館」なる保養所まがいの建物を借りてやっているらしい。
まずは、簡単なウィンド理論の説明を口頭で説明される。
説明するのはヨッチという副校長だかのオニーさん。
ちょっとその辺のサーファーとは雰囲気が違う。どういう風に違うかというと、ヤンキーの香りがそこはかとなく漂うのである。
しゃべり方とかもなんとなくだらしないしなぁ。
なぞと思っていたこの人こそ、ワタシのウィンド時代の第１の師匠である真壁ヨッチであった。
「今日はスクール生が多いんで、３名で１艇を使います、地下にウェットスーツがありますから自分でサイズ見つけて着てください。」
３人に貸し出されたのは、初心者の練習艇であるスターサーファーという機種。
１メートル近い幅の畳のような板で、安定性が高いのだそうだ。
まずは、海岸でセールのとりまわしのシュミレーション。
いわゆる「ファイブステップ」の練習だ。
既にセッティング済みのリグ（マストとセールとブームのセット）についているロープでセールを起こす。
マストを立てたら 、ハイ、イチ、ニィサン、シのゴォ、でスタンス入れ替え、ブームを持って風を入れると。
ブームはまっすぐ水平にしてぇ。
ハイもう一回、イチ、ニィ、サンシのゴォ。
５回ずつ位やるとすっかり飽きちゃって、早く板乗せてくれ状態となるが、午前中はこれやるらしい。
イチ、ニィ、サンシのゴォ。
リグの数も足りないので交互にやるんだが、すぐに飽きちゃって、もうやる気ナシ。
海岸に座って、海のほうを見るとウィンドが何艇も動いている。
連休中の高くて澄んだ青空がひろがっちゃたりして、風もきもちいい。
あー、海って気持ちいいなぁ。改めて気がついたワタシであった。 |
