実はその前の週、ワタシはＭ先輩の家の泊まり、葉山の海辺で日焼けをしたり、マリーナで船を眺めながらおしゃべりをしたりして週末を過ごしていた。
昼飯でも食おうということになり、葉山マリーナのケンタでフライドチキンを買おうとすると、我々の前にウェットから水をポタポタしたたらせた女の子が二人いたのである。

横にいるＭ先輩を見ると既におめめがハート。
二人の会話から察するにウィンドサーフィンのスクールの昼休みらしい。（今考えるとなんで海岸からちょっと離れたマリーナにいたんだかよくわからんけど）
防波堤でケンタを食いながら、
「さっきの娘たち、かわいかったねー」
「やっぱ、サーフィンよりウィンドのほうがなんか品がありますよねぇ」
「基本的に分類としてはヨットだからさ、やっぱ違うんじゃないの。でもヨットは男ばっかでつまんないけど、ウィンドはけっこう流行ってるらしいよ」

学生時代ヨットのクルーをやっていたこともあるＭ先輩の鼻の穴は開きっぱなしである。
「もう、あんな娘がウハウハいるんすかねぇ」
「そりゃもうテンコ盛りでしょう」
あくまでナンパな二人であった。

そんな翌週、早速「ウィンド習おう」とのお誘いである。
さすがに気恥ずかしかったのか、
「イヤ、僕の幼ななじみの女子高生が習いたがってるんだけど、一人じゃ心細いってそこのおばちゃまから頼まれちゃってさぁ。」
（ちょっと話は逸れますが、東京のいいとこんちのお坊ちゃまお嬢さまたちは、友人の父母なんぞを「○○のおじちゃま」「おばちゃま」と呼んでました。あの習慣は今でも続いてるのでしょうか。続けてるなら今すぐやめろ、コラ）
そういって、その幼馴染の写真を見せるんである。

ありゃ、かわいい。
「習いましょう」
即答である。

そして次の週末、我々はスクールの集合場所である逗子のウィンドサーフショップ「ココナッツボーイ」にいた。
狭い店内はウィンドの道具らしきものと、スクールの生徒であふれかえっていた。
さすがにＧＷ中ということで、かなりの大人数らしい。