牛が増殖

この島は綺麗です。特に緑が美しいそれもびっくりするくらいに。イヤこれはマジで。
さすがガーデンシティを標榜するだけあって、どこもかしこも道路際は植え込みだらけだし、町中にも見上げるような大木がゴロゴロと生えている。


最初は熱帯だから、ほっといても伸びるんだろうなんて思ってたんだけど、ほったらかしじゃぁ全部青々とした状態をキープできるわけがないってのはちょっと住んでると気がつくのであって、日々水撒きから剪定、植え替えなんかの作業が行われているのである。
ほっといたらあっという間にジャングルになっちゃいますよ。

ひょっとしてこの島の予算では国防費に次いでお金が投入されてんじゃねぇかと思うくらい。

植え替え作業中

 

 

そしてこの島には芝生の原っぱも多い。
淡路島程度の大きさであるからしてゴチャゴチャ家とかビルが建っててもおかしくないんだけど、人間は高層住宅に押し込んで土地の利用効率を上げてる分だけ、まだまだそこここに芝生の空き地が残ってるんですな。
そして芝生はいつも綺麗に刈り込まれております。 だいたいインドネシアやバングラデシュあたりからので稼ぎのヒトタチと思しき労働者が、真っ昼間からツナギ着て作業をしていらっしゃる。
そのようなわけで、この島の環境に対する配慮は並々ならぬものがあって、その点については高く評価されてヨイと思う。

さて数週間前、クライミングをしにイーシュンに向かっている途中の事だ。
やっぱり緑地帯というかいわゆる糊面というか、芝生の斜面に漫画みたいな牛の絵の看板が立っているのに気がついた。あーたぶんこの辺の小学校かなんかの課外活動かなんかでやってんだろう、子供のやるこたぁかなわねぇな、みたいな。

ところがですねぇ、ワシが出勤前に通る公園に突如としてその看板群が現れたのである。

な、なんだありゃぁ?
まさか全島あげて小学生の牛の絵ばらまいてるワケじゃあるまい。

そしてワシの鋭い頭頭にいひらめいたのは「奴ら」のことである。
そう、ワシの家の目の前にある橋を原色のナルト模様に塗り替え、金魚の風船を出現させ、島中の繁華街に馬鹿げたライオンの「アート」とやらをばらまいた「奴ら」のことだ。最後は牛の「アート」まで登場したわけで、ひょっとしてあの続き?
そーだ、きっとこのクソ馬鹿げた牛看板も、この島の住人の美意識を世界の笑いものにせんとたくらむ、あの「奴ら」 に仕業に違いない。


むぅぅぅん、これはどうしたもんか。
頼みの綱のこの島の政府も奴らの一部に取り込まれていることは明白であるしなぁ、なぞと考えつつクルマを駐車場に停めオフィスに向かっていると、なんとオーチャードのど真ん中の緑地にも設置されてるじゃぁねぇかっ!あんましよそ見とかしなかったから気がつかなかったのかも。

とりあえず恐る恐る近づいてみるとご覧の通りのベニヤ板を張り合わせただけのごくごくチャッチイ作り。
ひょっとするとこれは焼き肉屋とかステーキ屋のティーザー広告かなんかか?

しかしまぁ、こんな見るに耐えないレベルの低い看板を公共地に建てる事を、あの景観にうるさいこの島の政府が許すとは。その一方、お金儲けには目のないこの島の政府がカネに目がくらんだのであろうか。
どっちにしても一般市民からの苦情が爆発しているに違いない。

とにかくどうなってんだこりゃ。と訝しがっていたところ、このようなニュースが流れてきた。

野原の牛看板が人気=入札で売却へ−コンフォート・シンガポール
 【シンガポール18日時事】シンガポールのバス・タクシー運行大手、コンフォートデルグロは18日、広告子会社ムーブ・メディア設立記念PRの一環として、このほど草地などに設置した1メートル大の牛の看板に人気が殺到、市民から譲ってほしいとの引き合いが相次いでいることから、入札で売却すると発表した。売却で得た資金は福祉施設に寄付するという。
 同社は、赤や青、黄色など両面が牛の看板、200頭分を作製、市内の広場などに設置したところ、市民から庭や家に飾りたいとの問い合わせが殺到、これまでに30“頭”ほどが紛失した。このため、入札で売却することにした。
 同社のウェブサイト上で応札を受け付ける。締切は30日。上位200の応札価格を提示した人が落札する。
 ムーブ・メディアは、コンフォートとSBSトランジットが合併し、コンフォートデルグロが設立されたことから、両社の広告部門を合併、新設された。ムーブ・メディアはコンフォートデルグロのバス、タクシー、鉄道駅などの広告スペースを販売している。


はぁ、今回は趣味の悪いスポンサーと代理店の仕業であったか。しかしまぁ作るヤツも作るヤツだが、それを許した奴らも奴ら。
そんでもってそれを欲しがる奴ら、それどころか盗む奴らまでいるとは....。正直言って、この島の住人達の美意識には到底ついていけましぇーん。

そして、その翌週この牛看板は忽然と姿を消した。
たぶん良識ある市民からの苦情が相次ぎ撤去されたのであろう...でもひょっとすると全部売れちゃったんだったりして。

2005.4.

 

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