あと数日でフルムーンとなる月明かりの下で、波が左から右に割れるのが見えた。ズズーンと鈍くブレイクの音が聞こえる。

どれくらいのサイズだろうか、距離もはっきりとはわからないが、かなりの大きさであることは間違いない。

部屋に戻って荷をほどき、ワックスアップしたり明日の準備をする。
ベッドに入ってもなかなか寝付かれない、とカッコいいんだが、例によって爆睡。

うっすら見えますか？

南の島に飛ばされて既に半年以上。5月からそろそろと始めたトリップも5回目だ。
今までは手探りの一人旅だったが、今回は盟友イチロヲがジョインである。
一人旅もいいが、仲間と同じ波を分け合う。これがトリップの醍醐味であろう。

当初目的地をロンボクに定めたが、イチロヲちゃんの日程、ワシの休み、そしてなによりフライトがフィットしない。
結局一番便数の多いバリに照準をあわせることにした。
ワシとしても、前回のクタステイでバリはもうダメだ、てぇ判断くだすのも何となく気が引けていた。
そして一度乗ってみたいブレイクがあったのだ。

そのポイントはレフトオンリーではあるものの、延々とロングライドを楽しめるという。波質もメローでロング向きだそうで、仲間のTJ氏のお墨付きのポイントだ。
クタから離れている為、混雑もせずメローな雰囲気らしい。

このロングオヤヂの為にあるようなポイントを知らずして、この島を語るわけにはいかないと感じたワシは、いつもの様にOMツアーさんに宿の手配をお願いした。
そして当日、ワシの住む島の空港でイチロヲ夫妻と合流し、カンガルー印の飛行機でデンパサールの空港におり立ったのであった。

迎えは前回同様ガイドのムルジャナさん。
空港からは2時間半の道のりだそうで、ガンガンエアコンの効く車内、ありったけのTシャツを着込んで深夜に宿に到着した。
そして、部屋にチェックインしたあと、暗い庭の向こうからブレイクの音が響いてきたのであった。

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相変わらず、6時のアラームの直前に目が覚める。
既に外は薄暗く、部屋を出ると目の前をショートボードを抱えて通り過ぎるやつが見えた。
アウトではかなり大きいブレイクが炸裂しているようだ。頭半？それともダブル？とにかく久々に見るサイズだ。
さっき通り過ぎたショートボーダーが正面でテイクオフするが、クローズぎみのロングウォールを慌ててプルアウトしているのが見える。

photo : zz

また、板折るハメになるんじゃないかと躊躇している間に朝日が昇りはじめた。
ゲティングアウトポイントはホテルの庭の前らしいが、ブレイクの正面。こんな所から出て食らわないのか見ていると、ロングが一人パドルを開始した。
あっという間に右手に流されてゆく。かなりカレントが強そうだがそのままブレイクの切れ目でアウトに出られたらしい。
セットの間ならなんとか出られそうだ。

イチロヲちゃんが起きてきた。
「でけぇよぉー」と声をかけつつ、もうガマン出来ましぇんと一足お先にパドル開始。
確かにどんどん右に流されて行くのがよく分かるが、なんとか食らわずに出られたようだ。
波は横から見るとサイズはでかいものの、ホレホレのマキマキのスティープな波ではなく、 メローな波質でちょっとホッとする。

とりあえず、ショートのミナサマが波待ちしているあたりより更にアウトまで行ってひと休み。岸を見て自分の位置を確認しながら、セットの感覚を間隔やらを観察する。

暫くするとセットが入ってきた。
確実にダブル近くありそうなうねりだ。うひょひょひょひょ。

次のセットでテイクオフを試みるが、ボトムを見下ろした所でビビってパドルを中断してしまった。
このセットのあとイチロヲちゃんも出てきた。ワシよりレフト側で波待ちする作戦らしい。

そのあと何本かセットをやり過ごしたあと、ちょっと小さめのになんとかテイクオフ。
小さめとはいっても頭は軽く超えてるだろう。
久々のバックサイドで体がいうことをきかない。ムリヤリ板をこねようとしたら腰がグギッと嫌な感じだ。あぶねぇあぶねぇ。
途中で前が閉じそうになりプルアウトしたけど、それでも軽く100メートルは滑ったか。こんなレフトは初めてだ。大崎グーフィーだってこんなに乗り継げないよ。

イチロヲちゃんも調子のいいのを何本かつかんだようだ。
ワシも 何本か捕まえて、インサイドまで乗り継いじゃったりする。パドルの距離は200メートルは軽くある。

パドルでイチロヲちゃんの脇を通ると、
「こりゃたまら〜ん、一生モンですよぉ〜」
と、既に脳味噌半とろけ状態のご様子である。確かにこんなんはビーチブレイクじゃあり得ないだろう。

まぁ平均はこんなサイズです。
ZZ / photo : Misao

その後のワシはとにかくでかいのとりたい一心。
とり損ねて得意のまっ逆さまでグリグリに巻かれるのを何本か。スープのパワーは結構あるが、３回転くらいでなんとか立ち直れる程度のもんだ。
しかして、巻かれた拍子にボードが尾てい骨を直撃、激痛が走ったりする。

ロングはワシラの他にロペツのロング乗った白人が一人だけで、そいつも早めにあがっていった。ちょっと小さめのはインサイドのショートの連中に譲り、いい感じでシェアできる。

その後何本か捕まえるが、さほど掘れてないせいもあってなかなかボトムに降りきらず、ちょっとイライラ。
それでも乗り継いで行くとインサイド側では面もきれいに整い、頭位のサイズに落ち楽しめたりするのであった。

ZZ / photo : Misao

途中から白髪の白人のジィサマが入ってきた。口ひげも真っ白で、ケンタッキーフライドチキンのカーネルサンダースかと見まがうようなジジィである。
日本ならレジェンドとやらに確実に祭りあげられそうなジジィであるが、分厚いながらショートの板で調子のいい波をさらっていく。

戻ってくると、親指たてながら「HA,HA,HA,HA,HA,HA」とやけに滑舌のいい笑い方だ。かっこいいぞジジィ。

（左）カットバックして、（右）あらよっと。
ZZ / photo : Misao

さて、こっちもだんだん慣れてきて、閉じ気味なのをうまくかわせるようになってきた。調子に乗ってインサイドまで乗り継ぐと、おあとは軽く200メートルくらいのパドルが待ってるって寸法だ。
ちなみにイチロヲちゃんのほうがサイズも形もいい波とってたような気がする。

その辺はイチロヲレポートでご覧下さい。

パラパラ漫画です。ちょっと重いぞ。
ZZ / photo : misao

そのうちアウトサイドがざわついたと思ったら、オンショアが入りはじめた。
面も崩れるし、肩はパンパンだしで一本なんとか乗り継いで最初のラウンド終了。
ふぅっ、１年分のグーフィー滑ったって感じっす。

今回ワシラの旅が調子よかった一つの要因は宿にある。

このポイントでワシラのようなお気楽オヤヂが泊まれるような所はここ一つ。
あとはロスメンが数軒あるだけだが、この年でロスメンはちょっとねぇ。

部屋はすべてコテージで、ワシラはオーシャンビューをお願いしていったのだが、まさにオーシャンビュー。ドアを開ければそこにはポイントが目の前だ。

飯は...朝飯しか食ってないからよくワカランが、ガイジンの口にも合うようなマイルドな味。充分イケる。

食堂からはポイントのインサイドが眼前。

気温が高くなるだろう日中も海風（これが波乗りの敵なワケだが）で気持ちいい、つうか涼しいくらい。

全体にそんなに豪華じゃないしけっこう古いんだが、メインテナンスが行き届いていて不快なところは全くなし。
国際的なホテルやら、なんたらプリだのの高級リゾートとは比べるべくもないのだが、波乗りが目的ならこれ以上は無駄ってモンだ。

ちなみにお客のほとんどが白人のサーファーカップルでした。
カップルの波乗り旅行って、彼女が波乗りやらないとけっこうお互いストレス溜まるような気がするんだが、 ここはポイントが目の前にあるだけあって「サーファーの彼女」気分も満喫できるし、うまいこといけば写真やビデオだって撮ってもらえるかもね。
彼女は彼女で飽きれば部屋かプールでのんびりできるしさ。
ただし買い物したいとか、ナイトライフも楽しみたいならNGです。

ただしオトコだけとか、ましてやおっさん一人じゃけっこうツライかもしれんな、と思ったりして。

とここまで持ち上げときながら場所は書かないのがワシのイケズなとこだ。
ま、ちょっと調べりゃだれでもわかるだろうし、もしわかんなきゃOMツアーのミヤガワさんにコンタクトして予約を入れてくれ（と宣伝したりする）。

部屋の守り神？

帰ってみればまだ10時。それでも３時間近く遊んだってことになる。
プールサイドでシャワー浴びて、そのままプールに飛び込み塩抜きだ。これが南の島のトリップじゃタマランよね。

ホテルで朝飯やっつけて、その後は思い思いにお昼寝タイム。
昼飯は外のワロンで和む。

（下）まどろむイチロヲ。サイコーですかぁ〜？ / photo : ZZ

風は入っているものの、ワロンの前のインサイドブレイクは形も良く、ショートボーダーの皆さんがリップを決めてらっしゃる。
波のサイズは潮が引いたせいか落ち着き気味。朝出たホテルのゲティングアウトポイントはどでかい石がゴロゴロしている。

ここにいる白人連中はオーストラリアンぽいのとヨーロピアンの半々くらいかな。どいつもガツガツしてなくていい感じだ。
それにしても、朝から一人の日本人も見かけないってのはどうしたことだろう。

日も傾きかけたところで、サンセットクルーズに繰り出す。
夕方、風も落ちたところでゆったりと波乗りってのが 狙いだったが、なかなかどうして風は止んでくれない。面はチョッピー、ヨレヨレでこりゃちょっと、って感じ。
そううまくはいかないってことよ。

しばらくがんばってみるが、どうしようもなく風波乗り次ぎながらインサイドに向かう。

インサイドはサイズは落ちるが、面はけっこういい感じ。でも既にサンセットタイムは時間切れ。

営業終了。
ZZ / photo : Misao

晩飯は....イチロヲレポートが完璧にフォローしてるんで手抜き。
ワシはサテーとビールでご機嫌。
本日は楽しく遊ばせていただきました。明日もヨロシクお願いしたいのだが、これからフルムーンてことでこれ以上波が上がっちゃったらどうなっちゃうんでしょうか、などといらぬ心配したりして。
部屋に帰って例によって爆睡である。

chapter 2 に続く