こないだテレビに出てたネタを「日乗」に書いたんで、その勢いでかいちゃお。
なんか我ながらイメージじゃないよなと思うが、こいつはいつか白状せねばな、とも思ってたので。

荒井由美ですからね。マットーヤさんじゃありませんよ。

ワタシは基本的に歌のうまい人っちゅうか、少なくとも味のある人が好きなので、この人はどうしても受け付けなかった。下手でしょ、唄。
しかも田舎の高校生には、この人の歌う世界は眩しすぎたというか、別な世界の出来事であったわけで、どう思ってたかということをヒトコトで言うと「ケッ」。
そういうわけでワタシがまだ高校生の頃に発売されたこのアルバムは、オンタイムには聴いてません。

ところが、大学に入るために東京なんちゅうとこに出てきてみると、入った大学はお坊ちゃん学校。ガキの頃からやってた縁でアイスホッケーのクラブになんか入っちゃったモンだから、周りは大学生の癖して自分のクルマ乗り回すお坊ちゃんばっかし。（その頃はアメリカンフットボールと並んでかっちょいいスポーツとされていのだ）
やれ六本木だの赤坂だのに連れてかれ、あぁ、こういうものなのか、と思いこんでしまったワタシはお馬鹿さんであった。

それでも、アライユミは相変わらず歌が下手で、先輩の車の中でおねーちゃんとのデートのあとそのまま入ってた、デート用に編集されたとおぼしきカセットから流れてきても、別にどうとも思わなかった。

そのようなお金持ちの世界についていけなくなったワタシは、結局２年でアイスホッケーはやめちゃい、なぜか昼間に六本木のお店でバイトをするのであるが、そこの店長さんがアライユミだーい好き。
レジの後ろのデッキの上にはアライユミのカセットがずらーりと並び、バイトの日は必ず１本は聴かされ、それぞれの曲に関する、彼自身の思い出やらなんやらを刷り込みのように聴かされたモンである。

で、ある日突然、アライユミの歌がワタシの体にスッと入ってきた。
鼻つまんだような声も、不安定な音程も気にならなくなったのであった。 歌詞とメロディーだけ聞こえた。

さてこのアルバムに関する思い出話。
どこで誰に聴かされたんだかシランけど、大学の時につきあってた例の巨乳の留学生の娘がこのアルバムの中の「魔法の鏡」を好きだったんですわ。
どうやらメロディーが気に入ってたらしいのだが、そのうち頼まれて歌詞を訳してあげたりね。するとまたいい感じなワケですよ。特にサビなんかさ。
留学の期間が終わって彼女が帰っちゃう前の晩に二人で聴いたりとかね。
あぁ、胸キュン１２０％である。

とまぁ、そんなわけで、A面１曲目からB面にひっくり返して（CDだと６曲目を飛ばして）「魔法の鏡」までのシークエンスは、ワシをあの頃に一瞬にして連れてゆくタイムマシーンであるわけであるが、そんなワシの思い入れを差し引いても、大変にすばらしい曲の連続であり、もうイヤになっちゃている人もたくさんいるであろう「海を見ていた午後」もこの流れの中であれば、たいへん素直に聞けちゃったりすると思う。

これくらい長い間やってる人であるからして、他にもいいアルバムはあるだろうし、ファンの人にはそれぞれにベストなアルバムがあるはずだ。
だけど アライ（マットーヤ）ユミが、ホントに自分のために自分の中から出てくるものを素直に曲にしていた頃の最良の１枚だと思うのですが、どうでしょうか。
ま、ダメな人にはどうやってもダメでしょうけど。

嫌いな人にはもちろん勧めませんが、これも★★★★☆です。